さっきまで部屋を満たしていた笑い声は、嘘のように消えていた。
静けさが戻ると同時に、男は無意識に背筋を伸ばしている。
──殴った理由。
軽口の延長で済ませていい話ではないと、本能が告げている。
目の前の神は、先ほどまで腹を抱えて笑っていたとは思えないほど、落ち着いた目をしていた。
その視線に射抜かれるだけで、先ほどとは別の緊張が、じわりと胸の奥に広がっていく。
どうやら、笑い話はここまでらしい。

餅神さま
『まずい』、どころじゃない。
このままいくと、とんでもないことになる。
だからぶん殴ってやったんだ。

おっさん
へ?
と、とんでもない??

餅神さま
うむ。
口で説明するより、見てもらった方が早いな。
──うにょにょにょにょにょにょにょ‥‥
(餅神がめん棒で引き延ばされたように薄く、平べったくなる)

おっさん
うわぁっ!!?
なんすかそれ!?

餅神さま
今から貴様に、ある映像を見せる。
ワシの表面をのぞきこんでみろ。

おっさん
ワシの表面って‥。
え?、ここになにか映るんですか?
鏡のように滑らかになった神さまの表面に、おぼろげに映し出された映像。
そこにあるのは、真っ白い壁の、無機質な部屋。
腕や鼻に管を通され、痩せ細った姿でベッドに横たわっていたのは、紛れもなく自分の母親だった。

おっさん
ああっっ!!?
‥‥!!

おっさん
なんだよ、これ!!!!
おいっ!!!
かあちゃんっ!!!?
なにしてんだよ!!!?

餅神さま
うろたえるな、
これは録画だ。
そう遠くない、未来のな。

おっさん
みらい‥?
こんな‥‥、
こんなクソッタレなもんが、オレの未来??


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