【2話】帰宅してまだ30秒よ?

男の自宅アパートの外観 STORY

コンビニの袋を片手に、男は外階段を上っていく。

中身は弁当がふたつと、ついでに買った缶ビール。

これだけで満足してもらえるかは正直あやしい。とはいえ、これが今の自分に用意できる限界だった。

ふと、胸ポケットを見ると、そこにいる気配はすっかり目を覚ましているようだった。

神様を自分の部屋に上げる。考えてみたらとんでもない状況だ。

──これってもしかすると、めちゃくちゃ畏れ多いことなんじゃないか?

いまさらになって、じわじわと現実味が押し寄せてくる。

遅れてきた緊張が、喉の奥をきゅっと締めつけた。だが、不思議と悪いようにはならない気もしていた。

なにせ今日は神に出会ったのだ。普通に考えたら、まずありえない。

──ツイてる、かもしれない。

指先をわずかに震わせながら鍵を差し込み、男は息を吐いた。



おっさん
おっさん

ふぃーーっと、
神さま、着きましたよ!

餅神さま
餅神さま

ふむ、
汚いのは予想どおりだな。

おっさん
おっさん

えへへ‥、すみません。
まさか急に誰か来るなんて思ってなかったもので。

餅神さま
餅神さま

だが、なかなか悪くないところだ。
おっさんが一人暮らしするには十分過ぎるほどだな。

おっさん
おっさん

そうなんですよ!
実は、自分でもけっこう気に入ってるんです!

餅神さま
餅神さま

家賃はいくらだ?

おっさん
おっさん

へ?
や、やちん?、ですか?

餅神さま
餅神さま

ああ、そうだ。

おっさん
おっさん

ええと‥、たしか6万えん‥、
‥‥だったと思います。

餅神さま
餅神さま

だったと思います??
なんだ?
その曖昧な言い方は?

おっさん
おっさん

え?
いやぁ、そう言われましても‥、
はっきり覚えていないもので、すみません。

餅神さま
餅神さま

貴様、自分がいくら払ってここに住んでいるのか、
把握していないというのか?

おっさん
おっさん

え、えぇ‥、まぁ‥。

ヒュッ‥
 
‥‥ドゴォッ!!

(突如、肥大化した餅神のこぶしがおっさんの脇腹に突き刺さる)

おっさん
おっさん

ぉごあぁッ!!?

餅神さま
餅神さま

ああ、すまん。
つい手がでた。

おっさん
おっさん

あが‥、がっ、かっ‥!
(な、なんだ‥?なにが起こった‥?
まさか、おれは殴られたのか‥?)

餅神さま
餅神さま

大丈夫か?
それにしても、己の家賃すら把握していないとはあきれたやつだ。
これは思っていた以上に重症だな。

おっさん
おっさん

んぐ‥、ぐくっ‥。
(いっ、いきが、息ができないっ‥!
それに‥、重症‥??いったいなんのことだ?)

餅神さま
餅神さま

とりあえず息が整うまで待つか。
このコンビニ弁当はワシのか?
遠慮なくいただくぞ。

おっさん
おっさん

‥っふぅーーッ!?、‥っふぅうーーッ!!
(‥‥。ま、マジでシャレになんねえぞ、これ‥‥)

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