コンビニの袋を片手に、男は外階段を上っていく。
中身は弁当がふたつと、ついでに買った缶ビール。
これだけで満足してもらえるかは正直あやしい。とはいえ、これが今の自分に用意できる限界だった。
ふと、胸ポケットを見ると、そこにいる気配はすっかり目を覚ましているようだった。
神様を自分の部屋に上げる。考えてみたらとんでもない状況だ。
──これってもしかすると、めちゃくちゃ畏れ多いことなんじゃないか?
いまさらになって、じわじわと現実味が押し寄せてくる。
遅れてきた緊張が、喉の奥をきゅっと締めつけた。だが、不思議と悪いようにはならない気もしていた。
なにせ今日は神に出会ったのだ。普通に考えたら、まずありえない。
──ツイてる、かもしれない。
指先をわずかに震わせながら鍵を差し込み、男は息を吐いた。

ふぃーーっと、
神さま、着きましたよ!

ふむ、
汚いのは予想どおりだな。

えへへ‥、すみません。
まさか急に誰か来るなんて思ってなかったもので。

だが、なかなか悪くないところだ。
おっさんが一人暮らしするには十分過ぎるほどだな。

そうなんですよ!
実は、自分でもけっこう気に入ってるんです!

家賃はいくらだ?

へ?
や、やちん?、ですか?

ああ、そうだ。

ええと‥、たしか6万えん‥、
‥‥だったと思います。

だったと思います??
なんだ?
その曖昧な言い方は?

え?
いやぁ、そう言われましても‥、
はっきり覚えていないもので、すみません。

貴様、自分がいくら払ってここに住んでいるのか、
把握していないというのか?

え、えぇ‥、まぁ‥。
ヒュッ‥
‥‥ドゴォッ!!
(突如、肥大化した餅神のこぶしがおっさんの脇腹に突き刺さる)

ぉごあぁッ!!?

ああ、すまん。
つい手がでた。

あが‥、がっ、かっ‥!
(な、なんだ‥?なにが起こった‥?
まさか、おれは殴られたのか‥?)

大丈夫か?
それにしても、己の家賃すら把握していないとはあきれたやつだ。
これは思っていた以上に重症だな。

んぐ‥、ぐくっ‥。
(いっ、いきが、息ができないっ‥!
それに‥、重症‥??いったいなんのことだ?)

とりあえず息が整うまで待つか。
このコンビニ弁当はワシのか?
遠慮なくいただくぞ。

‥っふぅーーッ!?、‥っふぅうーーッ!!
(‥‥。ま、マジでシャレになんねえぞ、これ‥‥)


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