【3話】主に恐怖

生活感のある男の部屋の内部 STORY

男はその場にうずくまったまま、しばらく動けずにいた。息を吸おうとするたびに、情けない音が、喉の奥で引っかかる。

──急に殴られるなんてどう考えてもおかしい‥。

ようやく息が通るようになっても、今度は頭の中が騒がしかった。

──家賃をきちんと把握してなかったのが気に入らなかったのか?

──だとしても、あんなに思い切り殴るほどのことか??

──それとも神さまにとって、あの程度の暴力は当たり前のことなのか???

怒り、困惑、落胆、そして恐怖。

色んな感情が頭の中で渦巻いて、動きたくても動けない。いや、正直、動きたくもなかった

──なんでこんなことになってる‥?だって今日はツイてるはずじゃ‥‥?

答えが出ないまま視線だけを上げると、テーブルの上では、さっき買ってきた弁当が開かれていた。

小さな神様が、その中身を当然のように食べている。

──いずれにせよ、ろくなもんじゃない。

男はゆっくりと視線を落とし、またうずくまった。



餅神さま
餅神さま

下界の弁当を食べたのは久しぶりだ。
なかなかうまかったぞ。

おっさん
おっさん

‥‥‥。

餅神さま
餅神さま

このもうひとつの弁当は貴様のだろう?
それとも、これも食べていいのか?

おっさん
おっさん

‥‥‥。

餅神さま
餅神さま

‥‥。
もう一度、
なぐられたいか?

おっさん
おっさん

えひっ!?、
いひぃいいいいいっ!?

 ッ!ガタガタガタッ!
 ダッダッダッダッ‥‥!!

 (反射的に起き上がり、色々薙ぎ倒しながら避難するおっさん)

餅神さま
餅神さま

冗談だ。
そこまで逃げなくてもいいだろう。

おっさん
おっさん

いやだっ!!
もうやめて!、なぐらないで!!!

餅神さま
餅神さま

おおげさなやつだな。
そんなに痛かったか?

おっさん
おっさん

痛いなんてもんじゃない!
ホントに死ぬかと思いました!!

餅神さま
餅神さま

人間はそんな簡単には死なない。
安心していいぞ。

おっさん
おっさん

これが安心してられるかぁああっ!!
あんなに強く殴るなんて!!
もう神様なんて信じらんねぇええええええぇ!!

餅神さま
餅神さま

おぉ‥
叫ぶとなかなかの迫力だな。
役者でも目指したらどうだ?

おっさん
おっさん

なれるわけないでしょ!役者なんて!
マジでもうわけわかんない!!

餅神さま
餅神さま

まあとにかく一旦落ち着け。
ほら、弁当があるぞ。

おっさん
おっさん

無理ですよ‥。
あんなボディくらったのに‥‥。
‥‥明日の朝食べるので置いといてください‥。

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