男は動けずにいた。
指先からじわじわと力が抜けていき、膝の上に置いた手が、かすかに震えているのがわかる。喉はひどく乾いているのに、唾を飲み込むことすら上手くできなかった。
──死体はぜんぶツブして喰った‥
その言葉が、頭の中で響いてくるたび、心臓が強く跳ねた。
呼吸の仕方を忘れたみたいに、息が浅い。胸の奥がざわついて、落ち着こうとするほど、余計に乱れていく。
目の前にいるのは、ついさっきまで飯を食っていた相手だ。だが今は、その同じ顔がまるで別のもののように見えた。
──「えっと‥、そ、それはまた、ど、どういう‥‥?」
言葉が続かない。何を聞けばいいのか、どう聞けばいいのか、それすらわからなかった。
対して、神は変わらない。まるで何も特別なことは起きていないかのように、静かに男を見ている。
その落ち着きが、何よりも恐ろしかった。

まあ、早いはなしが罰みたいなもんだ。
人間だって罪を犯したらそれを償わねばならんだろう。

え?
ええ、まぁ‥、そ、そうですね。

それと同じことよ。
贖罪のため、ワシは命令されてここにやってきたのだ。

しょ、しょくざい?
ですか?

そうだ。
まぁ仕方のないことだな。
あれだけのことをやったんだ。

っ‥‥!?
(ま、まずい‥、やはり俺は喰われるのか!?)

(いや待て、落ち着け!
まだそうと決まったわけじゃない!しかし、一体どうする‥?!)

(と、とにかく何か言わないとっ!!)

どうした?
すっかり黙って?

え?
え‥えっ‥とぉ〜、

おう。
エンリョせずなんでも聞いてみろ。

それってもう‥、取り返しがつかないかんじですか?

取り返し??
なんの?

その‥、しょくざい?の件です。

ああ、それか。
そうだな、裁判所の決定だからな。
もう絶対にくつがえることはない。

ど、どうしても‥、ですか?

どうしてもだ。
逆らうと今度はワシが死ぬことになる。

‥‥。
(も、もはやこれまで、か‥?

???
‥‥。

あ、あのっ‥!

うむ、
どうした?

最期に、母親に電話させていただいてもよろしいでしょうか!!?
こんな自分でも‥‥、
突然いなくなったら多分、心配すると思うので!!!

さいご??
最後なのか?
別に電話くらい、いつでもすればいいと思うが。


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